曹洞宗を憂う老師に聞く
――曹洞宗が今後の体制を変えていくきっかけになるのは、選挙制度改革と言われています。それが今、改正の方向になかなか向いていかないのはどうしてでしょうか。
曹洞宗宗務庁は明治の始めに、曹洞宗宗務院というところからスタートしたわけです。それがそのままずっと続いてきて、やはり制度疲労というか、そのような感触を受けます。本来ならば、そうした制度の自浄作用ということでは、三権分立が基本です。ですから、その三権分立という立場からいったら、はたして宗門はそのような分立をしてきたでしょうか。内局、宗議会、審事院の間で、お互いに緊張関係がないと駄目なんですね。そのことは、長い宗門の惰性の中で起こってきた大きな問題に感じます。
三権分立が機能しなくなったというのは、明治以降いろいろとあって、例えば、永平寺系と総持系とが対立するというような、いろいろなしがらみで動きを取れないようにしてきたのではないか、という感触を受けます。そういうところにみんなが気づいていかないと、一般の方々から見捨てられる時代がくると思います。
ですから、私は若い宗侶に期待をかけているんです。若い宗侶には、自分に対しても厳しい意見を持てる方はありますから、そういう方々は頼もしいですね。そういう方々が出られるような選挙体制が欲しいと思います。今の宗制からいいますと、必ず大本山永平寺系、大本山総持寺系というような肩書を付けて立候補しなければならない。しかし今から三十年ぐらい以前には、中道派だといって無所属的に立候補することがあったそうです。どちらの本山派かということだけを明確にするだけで、あとは立候補者が自分で決めればいいんです。だれにも拘束されるわけじゃないんです。
――国でも地方分権を少しずつ考えているようですが、曹洞宗でも各県の宗務所が力を持っていないと、地方で何にもできないということになるのではないでしょうか。
そうですね。だから、心ある方々は、それぞれの宗務所管内で布教委員会というようなものをつくって、活動しているところがたくさんあります。そういうところへもっと金を使っていかないと、育たないんです。今はみんな、自費でやっていますからね。情報というような視点から考えると、宗務庁ではいろいろな調査をしていますが、十年に一度というサイクルです。確かに定点観測というのは十年に一度でもかまわないように思われますが、今の世の中はかなり流動的だから、常に観測していないと実情に追いつかない。しかし、今の宗務庁は完全に官僚制度で、よけいなことはしないという風潮があります。いろいろな調査をして、資料を大事に保存する前に、それらを全部点検して、今後の宗門の布教や政策に生かす努力が欠けています。その資料を生かしていないわけです。それと同時に、教化情報の開示の研究も不足しています。
九管区には教化センターがあります。教化センターでは、毎月、月報を出しています。それには、いろいろな活動したことを克明に書いて、報告してるわけですよ。そこには、いい内容がたくさんあります。このことも前述のように、資料を生かす研究をしなくては今後につながりません。
また、宗務庁で書記の採用をやります。採用試験が、年に一回ぐらいあります。それについても、私から言わせれば、地方の宗務所の書記の経験が必要だと思います。そうすれば新しい空気がたくさん入りますよ。逆に、宗務庁で書記を入れたっていいですから、その書記を地方の宗務所に出したらいいと思います。そのほかにも、いろいろな方法がたくさんあるはずなんです。
(文責・編集部)