朗読から心の力を養う



   ごめんなさいが言えなくて

                       吉 之

ごめんなさい
その一言が言えなくて
多くの人を不幸にした
ごめんなさい
その一言が言えなくて
自分をこんなに不幸にした
ごめんなさい
その一言が言えなくて
後悔だけが残った
ごめんなさい
心からこの一言が言えていたら
俺は今ごろ何をしていただろう
                     (二〇九ページ)






解説 大分県・泉福寺 無着成恭

 この詩がのっている詩集『雨のふる日はやさしくなれる』は、そのサブタイトル『少年院から届いた詩集』とあるように、千葉県の八街にある少年院に収容されている少年たちの詩集です。
 だからどの詩も、今までの自分を否定し、今からどう生きていくかが語られています。
 相手の立場になって考えてみるとか、他人の心を理解しようとするとか――つまり、自己中心から自分も大宇宙の一因子に過ぎないのだという認識に至る過程が読み取れる詩集です。
 私がここに取りあげた詩も、「ごめんなさい」を三度、四度とくり返しているのだが、ゆっくりと音読しているうちに、「こんなに、ごめんなさいと言わなくともよいように、判断・行動に気をつければよかったのに」とか「わかった、もういいよ」と言って抱きしめてあげたくなるのは、私だけではないでしょう。一緒に泣いてあげたくなるのは、私だけではないと思います。
 とにかくこの詩集を手に入れて、声に出して、二度も三度も読んで欲しいのです。
 赤ん坊はもちろんのこと、子どもは誰でも自分本位です。自己中心です。そのまま大人になると重大な犯罪につながります。子どもが自己中心から脱却して、大宇宙の生理は自分の思うとおりにはいかないのだと悟ったとき、大人になるのです。相手の心になるということ、思いやるということの、なんと難しいことか。
 しかし、それがなければ教育がなかったといっても過言ではないと思うのです。
 一人の子どもが、一人前の大人になるには、《浴びるほどの助言やお説教》を聞いただけではダメなのです。自分の心の内側から、自分でその殻を破らなければダメなのです。


「雨のふる日はやさしくなれる」 ―少年院から届いた詩集―
平凡社編(平凡社刊) 900円(税別)