ご寺院各位

  21世紀の仏教を考える会代表
  (有)仏教企画
  代表取締役 藤木 隆宣

私たちの活動は
家業あるいは宗教活動?


 多々良学園の一連の記事を読んで、まず思ったことは、曹洞宗立の学校はそれぞれ設立の縁はあったにせよ独立法人として運営されており、それぞれの実情に任せるべきだ、ということです。ただ名誉職として理事長などに就任することは、今後必要ないのではないでしょうか。
 曹洞宗寺院で、学校法人・社会福祉法人を経営しているお寺は約四百カ所以上になると思います。各法人は園舎などの新築・改築をしますが、ほとんどの場合、宗務庁から補助は出ていません。
 多々良学園は、宗務庁から土地取得費九億円が平成十三年二月の宗議会で承認されているといいます。また、平成十五年六月の宗議会では十五億円の補助を承認したといいます。すでに決定していることではありますが、本来ならば、曹洞宗寺院全体の布教教化につながる資金として使われるべきではないでしょうか。
 二十一世紀に入り、国も地方も企業も、生き残りをかけて構造改革に取り組んでいます。お役所の国と地方はこれからですが、企業はバブルがはじけて久しく、すでに改革を終え、さらなる模索を続けています。
 曹洞宗は現在の体質のまま進めば、間違いなく死に体としての団体になってしまうに違いありません。(すでにそうなっているという人も多くいます)

現代教学の確立を

 私たちは、葬儀・法事中心の供養行事を宗教活動の中心に置いてきましたが、今後はそれに加えて、一般社会に目を向ける必要があります。社会に目を向け、社会の諸問題に宗教者として誰でも対応できる現代教学を、いち早く確立していただきたい。
 現代教学が確立されていないために、現場では困っています。私たちは、今生きている人々に仏教(仏道)のお話しをしなくてはなりません。現在の社会問題は、申し上げるまでもなく山積みになっています。すべてを宗教によって解決することはできませんが、人心の低下は日本の将来に大きな影を落としています。そのところが、宗教者に期待されているところです。大いにその期待に応えたいのですが、宗侶の資質向上や現代教学が確立されていないために、一大チャンスを逃してしまっています。
 宗教者が取り組むべき課題を整理して、早急に曹洞宗総合研究センターなどで現代教学の確立のために取り組んでいただきたい。

宗費の半分は
各宗務所の布教活動費に


 現在の宗費の使い方を見ると、予算のほとんどが宗務庁に流れてしまっています。東京から地方の布教活動はできません。現場と直結している宗務所に活動をゆだねるべきだと考えます。そのためには、宗務所に多くの予算を配分して、各宗務所がそれぞれの地方において、現場に応じた活動を展開すべきです。宗費の半分はそのために使われていいのではないでしょうか。
 宗務庁は、包括法人曹洞宗としての総務、出版、詠道、教化活動の総括部門や研究活動などの中心となり、教化活動の主体は各宗務所に移すべきです。
 私たちの活動は家業なのでしょうか、宗教活動なのでしょうか。家業の感覚が多くなっているのではないでしょうか。そうであれば、社会にとって必要のない家業は自然淘汰されます。宗侶の意識改革を進めるのも、宗務庁の大きな戦略です。大きな社会(日本全体)を見たときに、戦略・戦術が必要なのですが、今の曹洞宗にはそれがまったくありません。宗議になられる人は名誉職ではなく、将来の曹洞宗のビジョンを持っていただきたい。
 多々良学園問題から、多くのかたに貴重なご意見を寄せていただきました、厚く御礼申し上げご紹介致します。


ご意見の投稿を

 今後、曹洞宗が二十一世紀に生き残るために、各位のご高見をこの紙面に反映させたく、郵送・FAXでお寄せください(実名・匿名でも可)。次回の〆切は十二月末日です。一月下旬に次号の発刊を予定しています。ただし、匿名の場合は、内容を点検させていただく場合もありますので、ご了承ください。

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 最後になりましたが、お正月の施本をこれからお考えのご寺院には、『曹洞禅グラフ』95号のご利用をよろしくお願い申し上げます。 合掌