●書評●
『考えない論』
杉原白秋・著 発行:アルマット 定価:1300円+税
フランスの思想家パスカルは、「人間は考える葦である」という有名な言葉を残しています。
考えることは人間に与えられた特権かもしれません。
問題にぶつかったら、だれもがどうしたらいいかを考えます。自分が望むことを実現するためにもいろいろと考える。たしかに、私たちはいつも考えているような気がします。著者も書いていますが、「しっかり自分で考えなさい」と言われて育ってきた人も多いでしょう。
しかし、考えたからといって、うまくいくとは限らないのも人生です。考えすぎて疲れてしまい、逆にうまくいかなくなった経験は私にも少なからずあります。
著者も、あるとき、いくら考えてもうまくいかない状況に陥ってしまったそうです。そして、「ほとほと考えることに疲れ果てて、自分の頭の中をあきらめが支
配したとき、別の考えがフッと浮かんできた」そうです。「ど−せ考えてもうまくいけへんのやったら、いっぺんまったく逆のことをやってみよう」。そして生
まれたのが、本書です。
といっても、何も考えずに、思いつきで生きればいいと勧めているわけではありません。その反対で、本書にはしっかりと自分を生きるためのヒントが山積みです。
こんな含蓄のある説明もあります。考えることは言語化すること。あらゆる感情は、考えたその瞬間に、言葉の呪縛により、その唯一性を奪われる。言葉の呪縛から解放されるのは、考えていないときだけかもしれない。
なるほど、と私はうなってしまいました。言葉で考えるのではなく、心身で直接考えろというわけです。
著者は「考えなければ、人間も自然の一部なのだ」といいます。自然の一部として、無理に言葉で考えなくても、自然と一緒に「大きな思考」ができるのかもしれません。一切の妄念を離れて無心になることで、見えてくるものも多いでしょう。
著者は、コピーライターでもあり、シンガーソングライターでもあり、いまは大学院の博士課程にいます。実に個性的な人生を送る若者です。そうした個性的な生活のなかで体験的に実践してきた、新しい生き方の書なのです。
47の章立てでとても読みやすいです。哲学的な話もあれば脳科学の話もある。武道も出てくれば、仏教も出てくる。抱腹絶倒の話もあれば、ちょっと「考え込
んでしまう」話もある。もちろん「考えないための実践法」もあります。ともかく読み出すときっと一気に読んでしまう魅力があります。
考えることに疲れた人はもちろんですが、考えないで生きてきた人にもお勧めの一冊です。
佐藤 修(潟Rンセプトワークショップ代表)