編集後記

 二〇一四年八月五日の朝日新聞朝刊の文化欄を読んでいる。磯村健太郎記者の記事だ。
 内容は「集団的自衛権と宗教」である。要旨は仏教界の足並みそろわず≠ニなっており、それぞれの宗派の意向が紹介されている。キリスト教の諸団体は全て反対、伝統仏教五九宗派が加入している全日仏は「深い憂慮と危惧の念」と、加盟団体の総意でないことを示唆し理事長名で表明したようだ。
 態度をはっきりさせたのは真宗大谷派、日蓮宗、臨済宗妙心寺派と記している。浄土真宗本願寺派の広島別院(五五〇カ寺)では「平和を願う念仏者の集い」参加者一同で反対声明を出したようだ。新宗教では立正佼成会が反対表明、神社本庁は支持を表明しているようだ。この記事の中に理事長以外曹洞宗につながる文字がない。いかに曹洞宗が「平和、人権、環境」を長らくうたっているがその中身が無い事を如実に表している。
 私の自坊のある福井県は原発県である。製材会社の社長と話をしているときに、「早く原発が稼働しないとあかんがのう」との発言。この地域は敦賀原発から三〇キロ圏内であり、福島県を訪ねた時の感想や原発事故が起きてからの対応がまだまだ進んでいないこと、その解決には私たちが責任を負えない時間がかかることを踏まえ、「原発稼働に反対です」と述べた。
 長野県伊那市の長桂寺住職、内藤英昭師は寺報「種月」一〇二号の中で仏教徒としての考えをはっきり述べておられる。個別的自衛権はやむなく賛成だが、集団的自衛権には反対だと。 
 内藤師の父上が昭和二〇年に三月に赤紙で招集され、シベリアで亡くなられたことの体験を紹介されながらのご意見には説得力がある。
 私も含め僧侶はお布施の事になると眼の色が変わるが、その他の事はあまり関心を示さない。本庁や各県単位の各種の講習会などで、本来立ち向かうべきテーマを議論していないといざというときに困るのではないか。まあ、お寺さんには関係ないことです≠ニ言われそうですが、はたしてこれでいいのか。
 日本人はいまだにお上思考があるので、集団バイアスにかかりやすい性格があるかも知れないが、事の本質は知っているべきだと思うが如何だろうか。曹洞宗宗務庁は何のために存在するのか。世間からは曹洞宗を代表するところと見られている。しかし中身はお粗末である。曹洞宗の一字も記事の中にないのだから。
 仏教企画から久し振りに三冊の新刊本が出ました。各お寺でのご活用をお願いしたいところです。特に故長井龍道師の『道元禅より見たる般若心経解説』はご僧侶には読んでいただきたい本です。お葬式ご法事の意味がより深く理解できます。
 『仏教企画通信』に、より一層のご支援をお願い致します。


       藤木髏驕@合掌