21世紀型の曹洞宗確立のためには
今、何が必要なのだろうか
『仏教企画通信』第4号(平成18年5月24日)を発刊したところ、次のようなメールが届きました。
このメールの内容は、今の全国のご寺院の気持ちをよく表していると思いますので、ご紹介致します。
仏教企画通信を通じ、貴会の存在を知りサイトを拝見しました。
現在 私のみならず、かなりの宗侶が現状に不安や不満を抱いていると思います。又、当然そうあるべきとも思います。しかし そこから踏み出す事ができずにいる。何らかの団体(自主団体 宗門内外を問わず)に参加しようと思っても その団体が政治的(これも宗門内外を問わず)意図に基づくものではないかとの危惧から参加できない等の理由もあるようです。
私は現在 寺院と同敷地内の学校法人立の幼稚園の園長も兼任しております。幼稚園長をはじめ教育関係者の社会との意識のズレは大きいものがありますが、宗侶の意識の乖離は、その比ではないようです。
私の師匠(父親)は、今の選挙法について、「この選挙法は宗門の自殺行為になる」と訴えていたのを覚えておりますし、当時 宗門と関係のない大学の法学部の学生であった私は常識的に選挙法改正自体が成立しないだろうと思っておりました。宗門人の常識的な判断としてそれが当然だろうとおもっておりましたので。
その後、結果的には僧堂に行き宗侶となり、二〇年ほど前は青年会の役員もさせていただいた事もあります。地元の曹青会活動にも励んできたつもりです。一人一人は皆純粋で熱意も持ち、まじめな宗侶が大半だと思います。しかし 宗政というか宗門の体質自体は、それが社会にさらされれば、さらされるほど社会の識者の期待を裏切るものではないかと考えます。
現在 幼稚園長として、保護者の対応に追われながら、何故このようないびつな大人が増えてきたのか、幼稚園として社会に対し何ができるかを考える時に 幼児に対しては積極的なアクションが起こせるが、大人に対しては甚だ無力な事を身を以て感じております。
こういう社会になり こういう大人が増えた事に関しては様々な分析 例えば公教育制度の歪み、経済生活の変化バブル崩壊等言われています。しかし宗教及び宗教家、特に日本では僧侶があまりにも消極的でありすぎたことを痛感します。今回の宗門内の事件については、今後の宗門宗侶の反応や対応に関し、しっかりと見ていきたいと思っています。同時に地方の一住職として何ができるかを自問している所です。貴会の存在に大いなる期待を持って賛同いたします。
次に、平成18年7月3日〜4日にかけて、第21回有道会東北大会が宮城県仙台市で開催されました。大会には、東北各県の代表百七十名と本部から荒澤会長、葦原教学部長、渕幹事長、東北六県の宗議が参加する大きな大会でした。(私も招待を受け同席)
その時に、当日の参加者からの求めに応じて、宗議会の報告書を作成された、千葉省三委員長が発表されたものを、大会決議文と共にご紹介したいと思います。
第1 はじめに(概要・目的)
学校法人「多々良学園」(以下「多々良学園」又は単に「学園」という。)の本館は昭和14年に建築され、々の後生徒の増加に伴い屋上に教室の増築等を施し、急場を凌いで平成16年に至り、老化現象著しい状態にあった。
平成11年の台風により、4階の増築部分は全壊に近い損害を受け、本館の危険性、また隣接地に競輪場が設置などにより、学校としての周辺環境の悪化などが問題となり、移転の必要性が理事会の正式な議題として協議されるようになった。
平成11年12月22日の理事会以後、学園の移転建設が決定へと進み、防府市との協力態勢のもとで、市が学園都市構想を打ち出した台道地区を新天地とし、平成13年11月、業者との土地造成工事契約後、校舎建設へと進んでいき、平成16年4月3日、落慶式典を挙行し、新しい環境での学校教育が始まった。
しかしながら、校舎移転新築の過程において、総事業費84億9666万円(平成17年2月教学部長答弁)の費用のうち、24億円は宗門の補助(実質は22億9000万円)、自己資金1億円、その他のほとんどが金融機関からの借入によって賄われていたという、極めて無謀な計画であった。
一応の資金計画は立てられたものの、不確実な寄付をあてにした初期の計画の甘さ、理事会の機能喪失、宗門とのかかわり方の曖昧さ、資金調達の空転、あるいはその他の要件が原因となり最終的には民事再生手続きにより、宗門の先達が築いてきた127年の歴史ある財産を宗門の手から放さざるを得なくなった。
宗議会調査特別委員会(以下「本委員会」という。)は、多々良学園移転建設事業(以下単に「移転事業」あるいは工事を区分し「土地造成工事」、「校舎等建設工事」という。)の過経で、どのような問題があったのか、また多々良学園が、なぜ民事再生手続きに持ち込まれなければならなかったか、を宗議会の立場から原因を究明し、全国寺院に対して説明責任を果たそうとするものである。
第2 本委員会の調査にあたっての基本的姿勢
多々良学園の問題については、学園及び宗門より各々専門的立場からの調査結果が提出されているが、いずれも宗門の内部にまで及ぶものではない。
本委員会は、宗議会の立場から学園の移転事業の進捗状況における問題点と、なぜ「民事再生手続」に至ったか、についての過程を明確にし、移転事業における「多々良学園」と「曹洞宗」とのかかわり方が妥当なものであったか、を検証するとともに、宗門行政の横造的問題、宗制の規定内容等についての問題にも言及し、責任の所在について調査し、今問われている一連の諸問題に対して、宗門が、そして宗議会が責任ある対応をしてきたか、また全国寺院の疑問に対して責任ある回答をしてきたか、の反省をふまえて、この問題の追求と自浄努力の一端になり得るような調査活動でなければならないことを確認した。
さらに、本委員会は本報告書のとおり「理事会議事録」等をもとに、理事、評議員、監事、学園関係者、内局、業者などの関係者の意見聴取(以下「ヒアリング」という。)と、関係資料を客観的に取り扱った調査により事実をまとめるとともに、本委員会としての総括を付すことを基本的姿勢として調査活動を展開することとした。
なお、本委員会は、債権者である銀行から求められるであろう、曹洞宗に対して厳しい追及をも考慮に入れつつ、宗政への信頼回復のためにも、躊躇することなくこの調査を展開した。
宗議会調査特別委員会報告書
《目 次》
第1 はじめに(槻要・目的)……1
第2 本委員会の調査にあたっての基本的姿勢……2
第3 本委員会の調査の経過……3
イ.全体会議について……3
ロ.4班構成によるヒアリングについて……4
ハ.ヒアリングの基本的な進め方について……4
ニ.ヒアリング実施状況について……5
第4 本委員会の調査の範囲・限界……6
イ.調査の範囲について……6
ロ.調査の限界について……6
第5 移転土地造成・新校舎等建設の経緯……6
第6 調査内容の報告……19
イ.多々良学園側の問題について……19
a 学園内の体制と総合的実情を検討した結果のマスタープランであったかについて……19
b 理事会の実態と責任体制について……22
c 議事録の内容と不完全性について……26
d プロジェクト委員会組織と機能について……27
e 事業計画のスタート時点での問題について……29
f 事業予算(総事業費)の曖昧さについて……30
g 建設資金計画の実態について……32
h 金融機関からの資金借入の実態について……36
i 学校職員としての責任について……37
j 建設計画の実態と工事進捗状況について……37
k 経営破綻から民事再生手続き開始までの経緯……39
ロ.内局側の問題について……42
a 学園、理事会、内局の関係について……42
b 内局の関与の実態について……42
c 設計業者、建設業者、宗門のかかわり方について……43
d 曹洞宗(宗務庁内局)としての責任について……43
ハ.宗議会側の問題について……46
a 宗議会における補助金決定の過程について……46
b 移転事業補助「24億円支出」の議決は正当あるいは妥当な手続きとなり得るかについて……46
c 宗議会議員としての責任について……47
ニ.その他の問題について……48
a 専門家・専門機関の調査の結果について……48
b 「コンサルタント」について……48
c 多々良学園の卒業生の声に対して……48
第7 事実の経緯から見た問題点(総括として)……50
イ.「教育規程第39条」について……50
ロ.理事会の機能の明確化について……51
ハ.法人の異なる「曹洞宗」と「宗門関係学校」とのかかわり方の是非について……51
ニ、「宗門関係学校」が「宗門」に貢献しているか・また「宗門」が「宗門関係学絞」に期待するものはなにか……52
ホ.補助金決定について……52
へ.今後の方向性について……53
ト.その他……53
第8 おわりに……54
資料編
別紙資料1 調査に使用した資料一覧(報告書・第4−イ関係)……1
別紙資料2 マスタープラン計画(案)の設計図(平成12年11月作成)……4
別紙資料3 竣工図(平成16年3月31日作成)……5
別紙資料4 臨時委員所見(提供資料より)……6
第99回通常宗議会における「議会調査特別委員会の報告書」の扱いについて
第99回通常宗議会において、この問題の取扱について、「開示すべきである」と「開示すべきでない」という二つの意見が大きく分かれ紛糾しました。
有道会においては開示すべきであるという意見の一致を見ました。内局においては教学部長の説明の通りであり、平行線をたどって暗礁に乗り上げてしまいました。
私ども調査委員会は「議員立法によって立ち上げた調査委員会であるから、その精神によって議会で報告するのが正当な方法である。又、宗議会で調査委員会が報告することにより宗議会に対する調査委員会の責任であり、宗議会が全国寺院に対して責任を果たすことになるのであると主張し続けてきました。
宗議会で開示しないことは議事録に載らないのであります。議事録に載らないことは宗報にも載らないのであります。これでは宗門が全国寺院に責任を果たしたと言えないのでありますが如何でしょうか。
有道会、総和会、調査特別委員会でそれぞれ随分議論を尽くしました。そこに「宗門を救わなければならない」という考え方に二つ有りました。
内局の考え方は民事再生手続き中でありますので、我々調査委員会の調査報告書が開示されることにより、予想される損害賠償責任の訴訟問語が起こった場合、宗門は大きな損失を負わなければならないという、当面の宗門を救うという価値観に立った考え方であります。これは顧問弁護士も当然この視点に立っての指導をなされております。
調査委員会としては、調査に入る前に債権者からの訴訟において不利に働くことがあり得るかもしれないことを覚悟して来ましたし、宗門の体質の悪さがこれまでのいろいろな問題解決に繋がって来なかったことを充分考え、宗門の近い将来、或は遠い将来に向かって公明正大な宗門の姿、宗門運営の姿を作り出す、要するに宗門の改革が必要であるということが、宗門を救うということになるのだという価値観に立って調査を展開してきたのであります。
調査委員会はこの価値観に立って、この議会を逃せば、いつその機会が来るかわからないということで強く開示を要求してきたのでありますが結果的には内局の言い分に従わざるを得ない結果に終わり残念でありました。空しさばかりが残った議会でありました。
(平成18年7月3日〜4日に開催された第21回有道会東北大会で、委員長の千葉省三議員が質問に答えられたものを、編集部でまとめました)
大会決議文
1 多々良学園問題を究明する3調査委員会(学園、内局、宗議会)は速やかに報告書を公表し責任の所在を明確にしなければならない。宗議会の道義的責任の信を問う。
2 現行の宗議会議員の選挙制度を速やかに改革し、立候補者はマニフェストを明確にして公選されるべきである。
3 宗門の改革、有道会自身の改革、会則の改正、会計の透明化、人事に関する公平性を目指す。
本大会の趣旨である「有道会の明日に向かって」のテーマの如く宗門改革と宗政の正常化を希求し、全て透明化された状態で誰もが参画でき、一般檀信徒からも信頼され得る宗門となるよう決議し、今ここに東北から発信するものである。
さて、これだけ細かく調査された議会の報告書が、私たち一般寺院には公表されずにお蔵入りになるということはいかがなものでしょうか。債権者側の物的証拠になるというのが主たる理由ですが、学園移転に関しての学園理事会には当時の内局の総長以下、主な部長が同席していたと聞いておりますので、学園理事会と曹洞宗内局は同じ議案を共有していたことになり、いまさら頭隠して尻隠さずのように思えてなりません。が、今回の中身は相当に突っ込んだものなのかもしれません。
債権者側との和解が成立した後、全部公開をしていただきたい。宗費を二十二億九千万円つぎこみ、学園を手放し、今後五億とも二十億ともいわれるお金を私たちの曹洞宗に課せられるということは、一体誰がどのように責任を取るのか明確にしない限り、全国のご寺院は納得しないでしょう。(八月十二日の情報によると、山口県の銀行団が曹洞宗の十四名に対して、損害賠償の訴訟を起こしたようです)
問題がここまでくると、当時から関わってきた宗議の方々に、その責任のランク付けをして、応分なご負担をお願いしたらというご意見もありますし、また一方では、お金の負担はいいから関わった議員さんは隠退していただき、その責任をまっとうして欲しいというご意見もあります。
しかし、九月の改選を前にして、責任を取る体勢ではなく、仕切り直しに向かっているようだ。その思いは「ある方が一方的に進めてきた結果で、自分達は積極的な賛成はしていなかった」ということでしょうか。
ハガキアンケートの結果、メール文、大会決議文などを参考にさせていただき、私は次のことを提言したい。
1 宗門内外を巻き込んでの大事件「多々良学園」問題から早く脱却を。
* 宗門の道義的責任を早く明確にして、次のステップを。
* 3調査委員会(学園、内局、議会)の報告書を早く公表して、責任の所在を明確に。
(特定できなければ内局、宗議会の全体で責任を)
* 内局、議会はこの事件に関してはしっかりと対応しないと全国の宗侶は納得しない。
2 宗議会議員選挙を抜本的に見直し(特に連記制はただちに廃止すべき)、曹洞宗を論ずる人材を議会に送れるように。
* ある県のご寺院からのご意見。私の県からは20年間議員がでていません。
* 議員の質を問う方も多い。(選ぶ側もなあなあで送り出さないように)
* 立候補者は公約を、人物本位で選ぶ事が大切。必ず選挙で送り出す。
3 宗務庁の機構改革を5年を目処に。
* 包括法人としての本庁の役割と布教は各県の宗務所がもっとダイナミックに。
* 宗務総長は公選で、部長は議員以外からの登用も。
* 宗議会は宗門の最高議決機関として。審事院には法律家を必ず入れる。
* 本庁と宗務所の人材育成を。 *住職の検定試験を。 *若い宗侶に活躍の場を。
4 「友人葬」と私たち宗侶が「戒名」をお授けしての葬儀の違いを真剣に現場で説くべき。葬儀、法事は私たちの生命線という自覚がもっと必要。宗門上げての運動として展開すべき。
* 通夜、葬儀、法事、寺での法要では、参列者全員が般若心経、修証義などを必ず読誦することを宗門としての運動とする。
最後に、今回の大事件を宗門の次への大きなステップにしないと、集団(宗団)としての命脈は絶たれることになると思います。
(お詫びと訂正)
平成18年5月24日発行の『仏教企画通信』第4号で、中外日報社の平成18年4月11日号と4月13日号の記事を掲載させていただきましたが、その際に中外新報よりと誤って報じました。関係者に深くお詫び申し上げ、謹んで中外日報と訂正致します。
21世紀の仏教を考える会代表
(有)仏教企画 代表取締役
臥牛院住職 藤木隆宣 九拝