多々良学園問題に思う


 仏教企画通信第8号を住職から見せてもらったがその中の「わたしの提言」を読むと、曹洞宗改革のための具体的な方法論が述べられている。五人のご老師様の論旨は、曹洞宗の現状の分析と将来についての展望を的確に捉えており傾聴に値するものと思う。
 提言の一つひとつは全て曹洞宗の改革にとって必要な事柄であることは、誰でも認める所である。
 しかし、一方で曹洞宗報(平成十九年五月号)の記事によれば、旧学校法人多々良学園に対する金融機関などからの損害賠償請求額はおおよそ三十七億四千万円であるという。このように多額の賠償請求に対して宗教法人「曹洞宗」は、どのような措置をとろうとしているのだろうか。
 宗門は、顧問弁護士らの助言を受けながらその万全を期したいというが、裁判が結審した後での判決がどのような内容になるのか、恐らく相当額の賠償金を科せられることは明らかである。
 賠償金の支払いについて提言したい。
 問題の詳しい経過等については、皆目分からないが、今回のような前代未聞の不祥事の後始末に檀信徒を巻き込むことだけは避けてもらいたい。
 今回は一万五千を数えるご寺院の全責任において解決してもらいたい。
 概算だが、一ケ寺平均の負担額は、二十五万円である。
 グランドホテル問題の解決のために用いた宗費の値上げに繋がる階級点数の一点当たりの単価の値上げや勧募金による方法は、寺院護持会会員である檀信徒の負担に繋がる。
 勿論、宗費などの負担を現にしているご寺院もあるが檀信徒数の多いご寺院ほど寺院護持会が全額または一部を負担し、ご寺院の名で納めている現実がある。
 心配なのは、ご寺院宗侶たちが事の重大さに気付いて自らが賠償責任を果たすかどうかである。
 旧多々良学園の移転建設のために学園の理事者が目論んだ全ご寺院からの寄付金総額は、三十億円と言われている。しかし、実際に収納された額は、昨年十一月現在で僅かに三億円であった。何が原因しているか、おおよそ分かるような気もするが、今回の場合、返済を怠ったら曹洞宗の名前も根城も訴訟を起こした金融機関などに渡ることである。また、一日の利息が三十五万円と聞くと一刻の猶予も許されない所まで来ていると言いたい。
 返済計画を早急に策定して返済に向かって着実な歩みを開始すべきである。
 今回の事件の一連の責任は、宗議会議員全員及び宗務総長を頂点とした内局幹部にあると極言したい。事ここに至っても、責任を回避するような言動をとる者があるとすれば極めて遺憾なことである。
 これらの方々は、問題解決の見通しがついた時点で、全員一斉に潔く退陣することをお願いしたい。
 人心を一新した体制のもとで強固な指導体制を確立し、旧来の澱んだ馴れ合いの人間関係を払拭して檀信徒の目線で捉えた真の意味での宗教集団に脱皮していただきたい。
「わたしの提言」で提示された事項は、賠償請求問題が解決した後で速やかに発動
されるべきものと考える。

(一檀徒)