追悼


 『曹洞禅グラフ』と、故・須田道輝老師とは、昭和62年夏号(通算22号)の連載「修証義を味わう」を御執筆いただいたのが御縁の始まりでした。
 次に「わが心の釈尊伝」を平成6年夏号から、6年間24回の長きにわたりご執筆いただきました。
 これらは内容の深さと解りやすさから、多くのファンの要望により、『生老病死』『わが心の釈尊伝』として当社より上梓されました。
 特集にも2回ご登場いただき、多くの読者に菩薩禅を高く掲げられたことが今でも深く印象に残っています。 (編集部)


須田道輝老師を偲んで

駒澤大学名誉教授・文学博士 佐々木 宏幹

 長崎県諫早市天祐寺住職にして文筆家としても知られた須田道輝老師は、夲年四月二十四日心不全のため遷化された。世寿七十八。
 師は茨城県の在家の出で、昭和二十四年禅匠沢木興道老師に就いて得度。昭和三十一年駒澤大学仏教学部卒業、同三十三年曹洞宗教化研修所に入所し、三年間「仏教と教化」について研修された。
 昭和四十二年パーリ仏教学の権威永野弘元博士に就いて嗣法、のち博士が住職されていた天祐寺に入り、昭和五十七年同寺住職となられた。長崎に落ち着かれてからは学僧として檀信徒の化導に精進されるとともに、著述に講演に大活躍された。単著だけでも十冊を越える。
 師の仏教者としての関心は「日本人の宗教的特質とは何か」という問題と「日本人にいかに仏教を説くか」というテーマに注がれた。
 そのことは師が研修所在所時にものされた論文「魂の概念について」(『教化研修』四)と「霊魂と業」(同誌五)からも知られよう。
 師は『修證義』を解説した著書のなかで「感応道交」についてこう述べている。「感応の「感」は仏の力を信ずる心です。信じないことには三宝の功徳(はたらき)はあらわれない。信じ念ずるとき、三宝の功徳がその「感」に応現するのを「応」というのです。……そして感応したとき仏法僧と私たちの信心の功徳が一体になるのを「道交」というのであります(『生老病死―運命をどう生きる―』仏教企画、平成四年)。師の学僧としての面目躍如たる文章ではないか。
 三年前の晩秋に佐世保でお会いしたとき、師は「心臓を患ってから放下することの悦びを味わっている」と語られた。
 ここに師の大寂定中の平安を、心よりご祈念申し上げる。