朗読から心の力を養う


『おーい ぽぽんた』 福音館書店刊

 八木重吉

この 豚だって
かわいいよ
こんな 春だもの
いいけしきをすって
むちゅうで あるいてきたんだもの


山村暮鳥

おうい 雲よ
ゆうゆうと
馬鹿にのんきそうじゃないか
どこまでゆくんだ
ずっと
磐城平の方までゆくんか


解説  岸田衿子
詩人・童話作家。群馬県在住。
著作に、詩集『たいせつな一日』(理論社)、絵本『かばくん』(福音館)、『森のはるなつあきふゆ』(ポプラ社)、エッセイ集『ふたりの山小屋だより』(文芸春秋社・妹今日子と共著)などがある。



   素朴な琴

 この明るさのなかへ
 ひとつの素朴な琴をおけば
 秋の美くしさに耐へかね
 琴はしづかに鳴りいだすだろう

 という、誰でも知っている詩を書いた八木重吉が、「このぶただって……」なんて詩を書いているということは、あまり知られていません。このアンソロジーは大人にも、ちいさいこどもにも、こういう詩を見つけてよろこんでみんなで暗唱してもらおうと選んだものばかりです。ひとりひとりちがう詩をみつけたり、すきな詩をみつけて教えてあげたり、発表するのもいいと思います。
 ご存知のように、俳句や短歌は世界中でいちばん短い形式の詩ですから、ちいさいこどもでもすぐ覚えられるし、暗唱することができます。動物たちだってつくっているかもしれません。いぜん、動物たちがつくった俳句をまとめました。その本にこんなことが書いてあります。
 ――わたしのなまえはうそはちだが、うそはつかない、まじめなかわうそだ。さて、みんな、はいくをしっているかな?
 そうだ、はいくは、にほんにむかしからあった、いちばんみじかい詩だ。ふつうは、五字、七字、五字をつなげて、十七字だけでつくる。そのなかに、きせつのことばをいれ、いろんなきもちをこめる。うそではないぞ。
 しかし、われわれはあまりきにしない。あそびのきもちでつくることもたいせつだ。

 むかし、にんげんに、はいくをおしえたのはかえるであった。そのかえるに、はいくをおしえたのが、わたしのせんぞのかわうそである。うそではないぞ。―― 

 芭蕉はかえるに教わって、あの、ふるいけや かわずとびこむ みずのおと という俳句をつくることができました。
 夏になって、田圃や草むらで歌いだすかえるや虫のように、わたしたちもすきな詩をおぼえてうたえるといいですね。


 おーい ぽぽんた

福音館書店 刊