新・寺子屋教育のすすめ

今こそ、お寺が再び地域の中心として、輝く存在となることを願って

◆日本子守唄協会理事長 西舘好子


西舘好子
(にしだて・よしこ)

1940(昭和15)年・東京生まれ。
井上ひさし氏元夫人。劇団「こまつ座」・「みなと座」株式会社「リブ・フレッシュ」を設立。
現在は、NPO法人「日本子守唄協会」の理事長、遠野市文化顧問などを勤め、講演会等を開催し‘子育て支援’などに資する為に活動中。
NPO法人日本子守唄協会ホームページ
http://www.komoriuta.jp



平成26年1月11日NPO法人「日本子守唄協会」主催の「子育てフォーラム」にて
(江戸東京博物館ホール)

司会の西舘理事長



 山の手線で目にした光景ですが、ベビーカーの赤ちゃん、一歳と何ヶ月くらいでしょうか、上手にスマホを操作していました。両親は座席で眠っていましたが、起きても母親は自分のスマホに夢中、父親との会話もありませんでした。
 話すって、創造力や観察やコミュニケーションがあって五感から作られるものですよね、人の顔すら見ないまま、家族の会話はなかったです。
 日本には自然や歴史や四季があり、それらから育まれた情緒や情感があってすばらしい日本語というものがあるのに、このままでは日本語も忘れられてしまうし、情操も道徳心も育たないのではないでしょうか。そうならないためにもこの國が過去からどんな遺産を受け継いできたのか、先祖や愛する人は何を残していこうとしたのか、それを伝えて、そこにたどり着かせるのは宗教の役目だと思います。

 中・長田暁二(音楽文化研究家) 右・原 荘介(ギターリスト)

神仏に祈り情緒や道徳を大切にする教育を寺子屋から発信しましょう

 お寺というのは一番身近に生死が共存している「場」です。
 死が生と共に、死は生の中にあると言うことに手を合わせたり、念仏を唱えたり、法話や説教を聞いたりのなかで心を落ち着かせたり癒されたり、勇気や知恵をもらう場、しかも地域の絆を密接に出来る所でもあるわけです。
 「寺子屋」という日常のさりげない教育のありようは、現代に最も必要で大切なのはないでしょうか。物や人を大事に、過去を思い、人と人との繋がりに心を砕き、死を見つめながら生を全うする、大局的な寺子屋教育を、和気藹々と楽しく地域で作っていく、それこそ、それはお寺の本来担っている仕事、力なのですもの。お寺が今一度地域の中心に立って欲しい、そう切に願っています。