ソプラノ歌手
堪山貴子さん
磨かれた高音は清楚で透明、奥行きがあって美しいと、絶讃される人気のソプラノ歌手・堪山貴子さん(46)。
堪山さんの実家は群馬県みなかみ町にある曹洞宗の建明寺(堪山泰学住職)。
幼い頃からピアノ教室を開く叔母由利子さんの指導でピアノを中心にした音楽教育を受け、東京芸術大学・同大学院オペラ科を修了。二期会オペラスタジオ修了時には優秀賞を受賞し、その後「カヴァレリア・ルスティカーナ」のローラ、「フィガロの結婚」マルチェリーナ、「カルメン」のタイトルロールも演じた。特に「フィガロの結婚」のケルビーノの役ははまり役として賞讃され、二期会オペラのほかにも小澤征爾指揮の同オペラの公演にも抜擢された。その活躍と同時に、学生時代に住んでいた埼玉県川口市の「川口第九を歌う会」のボイストレーナーとして二十五年、市民会員を指導している。
そんな輝かしい経歴を持つ堪山さんにも、転機があった。ヴァイオリニストでイタリアで活躍してきた「ベルカント研究所」の先生である現在のご主人と会ってからだ。
「もっと巧く、息を長く、もっと高く歌いたい」と賢明だった堪山さんに、先生は「ベルカント」の大切な意味を切々と説かれた。
「『ベルカント』は日本では唱法、歌い方の技法のようにとられています。しかし、ベルは美しい、カントは歌、の意味です。つまり作曲家の意図した音、望んだ思いを歌で表現する、いわば歌手はその媒体。作曲家は無から心血注いで曲を生み出します。歌い手は楽譜から気持ちを汲み取り、その表現が出たときまさにベルカント、美しい歌になるのだと気づかされました。それから歌う声だけに執着していた自分を、客観的に見直しました」と話す堪山さん。
その後、メゾソプラノからソプラノに転向し、「椿姫」のフローラ役など、次々に大役を演じ、第5回国際マリア・カラスフェスティバルでは特別賞を受賞した。
そして堪山さんが尊敬し指標とする偉大なオペラ歌手マリア・カラスの芸術に対する精神を生かすために、音楽振興を願って「NPO東京マリア・カラス協会」を設立。「東京ベルカント研究所」の代表代行も務めている。
三年前から、建明寺の「水上わかくり子ども園」で月二回、「ちびっこクラブ」と題して、母と子どもの前で、遊びながら唱歌・童謡を歌う会を始めた。
「人にとって歌うことは最も原始的な営みで、自然の音をまねて口ずさむこともあるでしょう。また、自分をなぐさめたり、やさしいメロディや言葉づかいが赤ちゃんの感性を刺激し情操を豊かに育むのです。今、唱歌・童謡を知らないお母さんもいます。ことばのわからない幼児でも、歌の記憶はおとなになってもどこかに置かれているはずです。小さなときに聞いていたものが、大きくなってその記憶にスイッチが入るときがきっとあると思います。今思えば父母にたくさんの種をまいてもらったように、私もその種をまいてみたいと思いました」。
四月から上尾市に「堪山音楽院」を開設し、ピアノ、声楽、ヴァイオリンの教室をはじめた。
五月には埼玉県川口市リリアホールで、「オペラアリアと日本歌曲のゆうべ」、十一月八日には十二回目の「マリア・カラスフェスティバルガラコンサート」が開かれる。
川口リリアホールでのコンサート
「こうもり」オルロフスキー役の堪山さん
埼玉県上尾市愛宕1・16・15・2F
堪山音楽院
TEL 048・782・8370