仏事相談

回答者:中野天心(長野県・常輪寺)


相談 主人方の位牌について質問があります。私は五年前に主人と結婚しました。昔、主人の祖父が戦争のころに若くして亡くなり、祖母が子供(主人の父親と兄弟)をつれて自分の実家に帰ったということです。祖父方の先祖代々の位牌もなく、祖父の位牌も祖父方の宗旨で位牌を作らず、祖母方の実家の宗旨で作っていました。祖父母が亡くなった後に、父の弟(祖父母の三男・未婚)が亡くなり、その人の戒名も祖母方の宗旨で作っています。
 私が結婚したときは、すでに祖父母は亡くなっていましたが、主人の父親の家には仏壇がありません。祖父母の位牌は祖母が実家の近くに立てた家(普段は人は住んでいません)にそのまま置かれたままになっており、父親はお盆にかえって供養するだけの状態がつづいていました。それはいけないと思って仏壇を買って、先祖代々の位牌を作りました。最近になって父親が祖父母と弟の位牌を新しくしたのですが、ひとつの位牌に祖父母と弟(祖父母の三男)が連名で入っており、その位牌が先祖代々の位牌より大きいのです。
 祖父母と弟が同じ位牌でいいのでしょうか? また、先祖代々のものより位牌が大きいのはいいのでしょうか? 家系を調べたのですが、祖父は長男です。
(T・Sより)

回答 お位牌に関する質問に答えて
 親先祖のご供養を大切に考え、「よりあるべき姿でご供養を」と心がけておられるご様子、誠に尊いことでございます。また、そのように心がけておられればこそ生じてくる、しかるべき疑問かと存じます。
 そもそも、お位牌とはなんでしょうか。目に見える肉体の命はなくなっても、永遠に続いていく命、その命の現れ方は異なっても決して無に帰するわけではない命、その命を具体的な形に現したものがお位牌です。
 我々自身の心の中に、行動や言葉の中に、そして故人が大切にしてきたものや生き方の中に、その亡くなった方の命を常に感じ、感謝の気持ちを育み、そのご恩に報いる生き方を心がけていくことができたならば、あるいは、あえて形に現れたものを設ける必要がないのかも知れません。しかし、具体的なものが目の前にないと、なかなか親先祖の尊い命を実感し、そのお心やご遺徳に触れられないのが実際です。最も大切なことは、感謝と報恩の心を持ち続け、それを行動に移していくことなのです。
 本来は一人ずつのお位牌を設けることが理想ですが、お位牌の数が多くなると、そのようなわけには参りません。何人ものご戒名を一つのお位牌にまとめる必要が出て参ります。その時に、親子、家族のご戒名が一つのお位牌にまとめて記されても何の不都合もございません。大切なことは、お祀りし、そこに掌を合わせていくという営みです。また、お一人ずつ、あるいは一代ずつのお位牌を作る場合には、ご先祖様や前の代の方々のお位牌より大きいものは作らないというのは、奥ゆかしい心配りとして当然考えられることですが、何人もの方々のお位牌をまとめた場合には、ご先祖様のものより大きくなることは往々にしてございます。肝心なことは、大きさの問題ではなく、お位牌に心から掌を合わせるという行為です。親先祖の方々のご恩を忘れることなく、ご供養・礼拝を通じてお参りをさせていただく私たち自身が、親先祖に「これでよし」と言っていただけるような生き方を実践することこそが大切なのです。