まごころの盆棚
長野県 常輪寺 中野 天心
「お爺さんは少し足が不自由だったので、この孫たちが、『爺ちゃん、乗る時に落ちるといけないから』と竹串ではしごを作ってくれたんです」
ある年のこと、お檀家のYさん宅へお盆の棚経に伺った時に、お婆さまが嬉しそうに話して下さいました。Yさん宅のお盆棚(精靈棚=しょうりょうだな)に飾られたナスときゅうりの牛馬には、お孫さんたちがお爺ちゃんのために作ったはしごが添えられていました。昨年のお盆に伺った時には、「今年は特別に暑いので、孫たちがお爺さんのために日傘を工夫して作ってくれました」と、お孫さんたちを温かい眼差しで眺めながらお婆さまのお顔は満面の笑みでした。
その地域に伝わる習慣や、ご宗派の特色などを生かして飾られるお盆棚は、あとに残されたご家族の方々の亡き親先祖に対する温かいまごころを、形に現して伝えて参りました。
お盆の行事は、日ごろ目先のことに追われ、ややもすると大切なものを見失いがちな私どもが、親しくご先祖さまをお迎えし、ご供養をとおしてそのご遺徳にふれさせて頂き、「果たして自分は、ご先祖さまがご安心下さるような生き方をしているだろうか」と自己を見つめ直させて頂く場です。どんなにあり難いお経を読んで頂いても、お坊さん任せではいけません。家族一人一人が、親先祖のご恩に報いる正しい生き方のご供養を実践することで、ご先祖様も私たちも、大きな安心(あんじん)を頂けるのです。