曹洞宗檀信徒必携・仏事、知ってるつもり
曹洞宗教えのすべて
第7回 「お寺の行事」

宮崎県・昌竜寺 霊元丈法


  年忌でしかお寺にお参りしたことがないのですが、お寺で行われている行事や法要の内容をお教えください。

  宗門の調査でも、法事や葬儀、もしくはそれらの相談でしかお寺を訪れたことがない人がほとんどです。けれども、お寺の重要な役割は、生きている人びとの救済にあります。お寺は昔から、魂を休めるところであり、心を豊かにするところでもありました。そこでお寺の行事に参加して、仏様の知恵と力をいただいて、厳しい日常へと戻っていったのです。
 しかし、核家族になって、故郷に残されたお年寄りだけがお寺の行事に参加するようになり、肝腎のストレスにさらされた青壮年を救う機会がなくなりました。この寺離れや信仰無知は、かえって宗教的に白紙の人々を生み、いとも簡単にカルト宗教に洗脳されて、犯罪にまで手を染める若者が続出しました。また、戦後の教育から宗教を排除した政策によって、宗教が迷信的なものと誤解され、民族のバックボーンがなくなってしまったのも残念なことです。
 道元禅師は正しい仏法を身につけるには、善き師を選ぶことだといわれています。曹洞宗の行事はほとんどが一般の人々に開放されており、大きな法要には専門の布教師の説法もありますので、積極的に参加してください。


お釈迦様(三仏忌・誕生、お悟り、命日の三聖日)

降誕会(四月八日―花祭り)  右手で天を指し、左手で地を指した誕生仏を花御堂に飾って、甘茶をお掛けします。この姿は生まれてすぐに七歩あゆまれて、天と地を指差し「天上天下唯我独尊」と人の尊さを宣言された故事によっています。それに呼応して天からは祝福の甘露水がそそがれ、地には花々が乱れ咲いたという喜びの行事です。この言葉を「かけがえのない自分だからこそ尊い」と受け取り、この世に生まれたことを感謝し、大切に生きていくことを誓う日でもあります。

成道会(十二月八日)  出家されてから六年後、ガヤの郊外の菩提樹の下で「悟りを得るまでは二度と立たない」と決断されて坐禅を組まれました。一週間後の早朝、今までの疑問がすべてはれてお悟りを開かれたのです。さらに一週間坐禅を続けられ、悟りの内容を人々に説く決心を固められました。以後、インド各地を巡って仏教を広められました。いわば仏教の誕生した日ですから、本山等では一週間、すべての雑用を止めて坐禅三昧の行(摂心)をします。お釈迦様の見いだされた真理(法)をしっかり学びましょう。

涅槃会(二月十五日)  四十五年間人々を導き、たくさんの僧院を作り、大勢のお弟子を育てられたお釈迦様は、あの厳しい自然のインドで八十歳の高齢を保たれました。生まれ故郷への道すがらのクシナガラで病のため亡くなられ、荼毘にふされました。息を引き取る間際まで弟子たちに「私の腐っていく肉体を見ずに、説いた真理を見よ」と教え(法)を拠り所として進むように励まされました。人と動物、生物と無生物をも問わぬ、すべての存在に愛をそそがれたお釈迦様を悼み、涅槃図を掲げてお偲び申し上げます。


祖師方(達磨様や道元・瑩山両祖、開山歴住等の命日)

達磨忌(十月五日)  インドから中国に禅を伝えた方で禅宗の初祖のご命日です。とくに曹洞宗では達磨大師の九年間壁に向かって坐られた事と「ひたすらにする坐禅」が呼応しますので、よく脇仏としてお祀りしています。

両祖忌(九月二十九日)  道元様(一二五三年没五十三歳)と瑩山様(一三二五年没五十七歳)の命日を新暦に直したら、奇しくも一致しましたので両宗祖の供養をいたします。両大本山永平寺・總持寺では御征忌が営まれます。因みに生誕は道元様一二〇〇年一月二十六日、瑩山様一二六八年十一月二十一日です。

開山忌/歴住忌  お寺を開かれた初代を開山といいます。また、禅宗では弟子師匠の関係を大事にしますので、実の親以上の供養を歴代住職のためにいたします。


季節の行事(正月・両彼岸・お盆によく行われる法要です)

修正会  除夜の鐘のあと、大般若経六百巻の転読等をして、新年を祝い、檀信徒の繁栄を祈祷します。

節分会  二月三日節分に星宿供養(星祭り)をして豆まきや厄払いをします。

両彼岸  仏教では春分、秋分の昼と夜が同じ長さになる日が中道の教えに合致するので、お寺参りをして仏教を学ぶ週間としました。

お盆(施食会/流れ灌頂/棚経)  仏教のお盆は昔のインドで雨期の修行が終わったばかりの僧を招いて供養したことに始まります。中国では親孝行の要素が加わり、日本の先祖崇拝の風習と一緒になって盛んになりました。お盆にはお寺で多くの霊に食物を布施する施食法要が営まれ、また万霊供養の流れ灌頂のあとの灯籠流しは夏の風物詩になっています。お盆には祖霊が帰られると信じられて、精霊棚に供物を供え、住職を招いて棚経をあげてもらいます。十五(十六)日に送り火を焚いてお盆行事が終わります。


特別法要(曹洞宗では僧になるために三度の大きな式をいたします)

得度  出家をこころざす人は仏門入門式をいたします。髪を剃り出家する儀式ですから、本当は親子や世間からの別れの式なのです。

法戦式  お経を覚え、法要に慣れると、いよいよ一人前の僧になるための首座となって先輩の問答に答えなければなりません。これは住職が大和尚になる時に直弟子を持つ関係から、多くは結制式と同時に行われます。

晋山結制式  最大の儀式で、晴れて大和尚となり緋衣を着られるようになります。晋山とはお寺に入る儀式で、昔は独身でしたので、信者に請われて住職になっていた名残の式です。同時に修行道場を開き、首座を定める結制を儀式として営みます。

お授戒式  お戒名は亡くなってからと思っている方が多いのですが、仏教徒の証としていただく仏戒ですから、生前にいただくのが本来です。両本山では毎年春に禅師様からいただくことができます。また、地方でも大きな法要に禅師様をお招きしたおりにいただく機会もありますので、ご住職にお尋ね下さい。もちろん、菩提寺のご住職からは位階号と共に常時いただくことができます。

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