私の体験(1) ポリープが消えた!

矢納正人


矢納正人(やのう まさと)
一九五三(昭和二十八)年福井県生まれ。一九七五年、早稲田大学卒業。現在、福井テレビ営業局次長。福井県ボランティアセンター運営委員。社会福祉法人・光道園の評議員。


西洋式食文化から、日本の伝統食事文化へ

 二年前、激痛でつばを飲み込むことさえ困難なほどの状態になったので、医者で検査を受けたところ声帯に立派なポリープができていました。以下に医者と私のその時の会話の模様を実況中継します。
 「これは大きなポリープですね。放っておくと危険ですから即刻手術しましょう」手帳を開いて「いつがいいですか?」
 私は、その時、大半の病気は食事療法や意識改革で治ると思っていましたので、「手術はしたくありません」と答えたところ、「手術をしないでどうやって治すつもりですか」と訊問され、正直に「食事療法で治すつもりです」と答えました。
 すると、それまで穏やかな顔で話をしていた医者の顔が険しくなり、まるで新興宗教にでも狂った者を見るような目つきで「食事なんかでポリープが消えるわけがないでしょう。今なら十日ほどの入院で済みますが、放っておいて大きくなったら取り返しがつかないことになります。それに悪性だったらどうするんですか。とにかく早く切除した方がいい」と言って、またまた手帳を開いて「いつ手術します?」と聞いてきました。
 私は、「悪性だったら尚のこと手術する気はありません」と言いましたら、この世にこんなアホがいるのかという顔で、「それなら、せめて一週間おきに検査に来なさい。そこで大きくなっていくようだったら手遅れになる前に切りましょう」と言われ、流石にここは従わないと帰してもらえないと思い「はい、そうします」と答え、それ以来、二度と行ってはいません。
 とにかく、手術、手術、手術以外に道はないとばかりに、患者の気持ちや意向を聞こうとしないのには閉口しました。病気は現代医療で治すのが「常識・普通」と思っている人には、食事や心の持ち方で治そうと言う人は「異常・非常識」に映るのだと思います。
 早速、食箋指導家に相談をして、私のポリープに対する食事療法の指導をうけました。その内容は、牛乳、乳製品、卵、白砂糖、肉、餅、酒などを止める事。レンコン湯を飲む事。サトイモ湿布をする事。玄米食、旬の野菜、手の平サイズの小魚、海草類などをとる事。オカズよりもご飯を多くとる事。よく噛む事などでした。そして、「半年程度で治るでしょうから、それまでは辛抱して守って下さい」と念押しされました。
 食事療法を始めて三ヵ月ほどはあまり進展がなく、「あの時直ぐに手術していれば、今頃こころおきなく食べたいものを食べ、飲みたいものを飲めていたのに……」と、正直、決心がぐらついた時もありました。結局、一年ほどでポリープが消えたという感触を得ることができたのですが、今になって思えば、ポリープを切らずに病気と向き合ったことの本当の意味がわかりました。
 日本の伝統的食事を見直す。それは、ポリープ自身が、私の生活習慣の歪みを教えてくれるアンテナの役割を果たしてくれたことです。そもそも人間とは、「喉元過ぎると熱さ忘れる」ではないですが、調子が良くなってくると、ついついハメを外してしまうものです。しかし、酒を飲んだりなど約束事を破ると、ポリープが「痛み」というお灸をすえてくれるのです。長い間かかってついた行動や考え方の癖は、そう簡単に治るものではありません。昔のパターンに戻る度に、「痛み」という信号で教えてもらい、一年間たった頃には、長い間の癖が多少なりとも変われたように思います。手術をしていたら、この修行はできていなかっただろうと思い、ポリープに感謝です。また、今回のポリープ体験で、「ビワの葉温灸」や「里芋パスタ」なども体験しましたが、日本には、昔から伝わる素晴らしい民間療法が先人の知恵として残っていることを知りました。《人》を《良》くすると書いて《食》という字になりますが、西洋礼賛の風潮の中で、日本の伝統的食事や価値観、民間療法などが価値のないものとして扱われてきた戦後の生活を反省する必要があるのではないでしょうか。

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